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ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

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上映日:2019年08月30日 / 製作国:アメリカイギリス / 上映時間:159分

監督:クエンティン・タランティーノ 主演:レオナルド・ディカプリオ/ブラッド・ピット

鑑賞日:2020/9/1

鑑賞媒体:DVDレンタル


【今作の★の数:★★★★】 良作。観て損なし。

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

・話題作を観たい人

・1960年代のアメリカ文化が好きな人(特に西部劇)

ブラッド・ピットレオナルド・ディカプリオが好きな人

タランティーノ独特の演出がたまらない人

 

<オススメできない人>

・古い時代のアメリカ文化に興味がない人

・史実と創作を交えた作品が嫌いな人

タランティーノの演出が苦手な人


<あらすじ>

リック・ダルトンレオナルド・ディカプリオ)は落ち目のハリウッド俳優。彼は友人兼付き人兼スタントマンのクリフ・ブース(ブラッド・ピット)とともに、何とかエンタテインメント業界で生き抜くことに苦心していた。そんなある日、リックの隣に時代の寵児ロマン・ポランスキー監督と新進の女優シャロン・テート夫妻が引っ越してくる。彼女たちの輝かしい日々を横目に、リックは再び俳優としての光明を求め、イタリアでマカロニ・ウエスタン映画に出演する決意をする。
そして、1969年8月9日-【あの事件の夜】を迎える。

 

<感想>

タイトルの「ワンス・アポン・ア・タイム」とは、日本語で「むかしむかし」の意味であり、おとぎ話の冒頭に使われる定型句でお馴染みだ。つまり「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」とは、「むかしむかしハリウッドで……」という意味であり、ハリウッド的なおとぎ話を示している。

この作品、はっきりいって、とても人を選ぶ。

単純にディカプリオが好きとか、ブラピが好きとかの理由で見ても「?」のまま作品が終わるだろう。ベースとなった現実の惨劇「シャロン・テート殺害事件」を知らないと話が始まらない。

シャロン・テート殺害事件とは】

1969年8月9日、『ローズマリーの赤ちゃん』で知られる鬼才・ロマン・ポランスキー監督の妻で、新進気鋭の女優・シャロン・テートが、狂信的カルト指導者チャールズ・マンソンの信奉者3人組によって、当日たまたま居合わせた3名の友人とともにロサンゼルスの自宅で殺害された事件である。

マンソンは、シャロンの前にその家に住んでいた音楽プルデューサーのテリー・メルチャーに、メジャーデビューさせられなかったことの逆恨みでシャロン邸を襲撃した。当時シャロンは妊娠8か月で、襲撃を受けた際に「子供だけでも助けて」と哀願したというが、それが仇となりナイフで計16箇所を刺されて惨殺された。

豆知識だが、ディアゴスティーニから刊行された世界の猟奇的事件を扱った『マーダーケースブック』 の創刊号の題材が「シャロン・テート殺害事件」だった。

 

面白かった。

作品公開時に、「タランティーノが魔法をかけた」などとの煽り文句が伝わってきたが。なるほど、おとぎ話であるなら、最後は「めでたしめでたし」で終わるのが綺麗な締め方だろうし、『イングロリアス・バスターズ』でも感じたが、史実を捻じ曲げても描きたかった世界線を描くというのが、彼なりの映画人としての哲学なんだと思った。

日本では、監督の代表作『キル・ビル』に次ぐ興行収入を上げたという本作品の感想を、良かった点と残念だった点に分けて挙げてみたいと思う。

 

<良かった点>

①60年代のアメリカ文化の演出

1960年代のアメリカが舞台であり、当時の音楽だったり、流行した西部劇だったり、TVドラマだったりと、ハリウッドが文化の発信地だった時代の描写に、とても引き込まれた。

自分は特に古き時代のアメリカ文化が好きなわけではないが、それでも今のように洗練されておらず、粗削りで型破りで、それでいて魅力的な文化だった映画や音楽、そしてヒッピーの存在などは本当に独特の世界観であり、刺激的だった。

ハリウッドで撮影される西部劇の裏側や、スターへの階段を上るブルース・リーのアクションに、大スターとなったスティーブ・マックイーンの存在などは、世代でない自分が観ても退屈しない鑑賞できたので、好きな人にはこの世界観は堪らないのでは。

とても良かった。

 

②物語の構成

落ち目のハリウッドスター(リック)が奮闘する姿と、新進気鋭のスター候補(シャロン)の輝かしい日々という対比の使い方が見事。

エンターテイメントの中心であるハリウッドの流行り廃りの速さを描くと同時に、特に観客は順風満帆に見えるシャロンにこの先訪れる悲劇を知っているだけに、その日々が輝いていればいるほど不安が募っていく構成になっている。その不安の排除を、将来が不透明なリックたちに託すという作品作りは巧いと思った。

史実とタランティーノの創作のバランスが絶妙に取られている。

 

③豪華俳優陣の演技

W主演を務めるレオナルド・ディカプリオブラッド・ピットという、かつてはイケメンハリウッド俳優の代名詞だったの二人の演技は、素晴らしかった。

年を重ねても、その肉体美や佇まいから醸し出すイケメンオーラが全く損なわれないブラッド・ピットに、渋みが加わり演技に重厚感とふと見せる弱さのギャップに何ともいえない味が出ているレオナルド・ディカプリオ。(落ち目を実感して絶望したり、小さな女の子に演技を褒められて涙するなど、スターとして純粋なディカプリオ演じるリックには何ともいえない可愛さがあった)

多くは語られないが、ふとした仕草で見せる作中の二人の友情の固さも良いアクセントになっていた。

上記二人に加えて、作品の本当の主役・シャロン・テートを演じたマーゴット・ロビーは本当に良かった。映画館で自分の出演する映画を見ながら、観客が笑ってくれると本当に嬉しそうに微笑む、今が最高潮といわんばかりの輝いた演技はこの作品の肝だったと思う。

 

<残念だった点>

①作品が人を選んでしまう点

豪華なキャストに、見事なシナリオ構成。監督が思い描いた空想の出来事を申し分のないほどに体現できていると思うのだが、何度も繰り返すが、「シャロン・テート殺害事件」を知らなかったり、関心のない人にはまったく響かない内容になってしまっているのは残念だと思う。

 

タランティーノが見せるハリウッド的なおとぎ話。

ちびまる子ちゃん』のキートン山田ばりのナレーションでのツッコミや、ラストの大乱闘に大音量のBGMを流したり、派手なグロ描写を入れるなど、監督らしさを存分に味わえた。

やっぱり、昔話なら、「むかしむかし」で始まり、「めでたしめでたし」で終わらなきゃね。

とても面白かった。

 

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