9人の翻訳家　囚われたベストセラー(微ネタバレあり)

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上映日：2020年01月24日／製作国：フランス／上映時間：105分

監督：レジス・ロワンサル　主演：ランベール・ウィルソン

鑑賞日：2020/8/11

鑑賞媒体：DVDレンタル

【★の数：★★★★★】　良作！　観て損なし。

★の数について

★★★★★　最高。おすすめ。

★★★★　　良作。観て損なし。

★★★　　　普通。

★★　　　　残念。

★　　　　うーん。

＜あらすじ＞
全世界で10憶ドルを売り上げるベストセラー小説『デダリュス』完結編の各国同時発売のため、様々な国籍を持つ9人の翻訳家が集められた。フランス郊外の豪邸にて、外部との接触を一切禁止され、原稿を翻訳していく。しかしある夜、出版社社長の元に「冒頭10ページをネットに公開した。金を払わねば、次に100ページを公開する」という脅迫メールが届いた。小説の内容を知っているのは、出版社社長と9人の翻訳家のみ。しかし、翻訳家は携帯電話などの外部との連絡手段は一切絶たれていた。一体脅迫者は誰なのか？疑心暗鬼になった社長は暴走を始めるが……。

＜感想＞

作品の元になっているのは、『ダ・ヴィンチ・コード』で知られる作家ダン・ブラウンが小説を出版する際に、海賊行為と違法流出を恐れた出版元がブラウンの同意のもと、各国の翻訳家を地下室に隔離して翻訳を行なったというの実話をベースに脚色がされている、とのこと。

事実は小説よりも奇なり、というが、これは何かが起こらないほうがおかしいと、ミステリファンなら妄想してしまう。

作品も設定を裏切らない出来になっており、結末のネタバラシからラストまでの一連の流れは、『ユージュワル・サスクペツ』を思わせるようなスムーズさがあった。

とても面白かった。

＜良かった点＞

①本が好きな人には溜まらない内容。物語の内容や結末に関して、あれこれと仲間内で考察し合う様は、嗜好の同士たちの雰囲気が出ていて良かった。物語に没入するあまり、涙を流したり、登場人物のコスプレをしたりと、あるあるを描いているのも微笑ましい。

②何といっても中盤から結末にかけての展開の妙。

「犯人は小説の内容をどうやってネットに流したのか？」

物語の途中である方法でその理由を示すのだが、ここで一つ目の驚き。確かにその方法なら可能だが、でも、それはあまりにも観客にはアンフェアな内容。「そうなんだな」と思ってさらに物語を追っていくと、物語のラスト、結末のネタバラシで驚愕する。

一つ目の解法に対して、観客の思っていることを代弁する犯人、そして、物語全体を通しての真相が提示され、オープニングの映像からの疑問点が全て解消する、というとてもスムーズな流れ。そして、ある施設を去る犯人と、まるで『ユージュアル・サスペクツ』のような作りに脱帽した。

＜悪かった点＞

①各国から9人の翻訳家が集まっている割には、焦点が当てられているのは、２．３人のみで、犯人は想像できてしまう。「謎解き」という観点からみると、「誰が犯人なのか？」ではなく「なぜ犯行を行ったのか？」が焦点であり、多人数の容疑者を煽るタイトルや予告はいまいち。

②良くも悪くもベストセラー小説『デダリュス』の内容を翻訳者同士で語り合うシーンが多く、彼らの本好きをアピールしたかったのだろうが、内容を理解していない観客の視点から見ると冗長である。また、様々な多国語が入り交じり、少し混乱した。

「私は作家になるだけの才能がない。その現実と向き合わずに人生を失ってしまった」

ある人物のこのセリフは、一度でも創作活動に携わったことのある人なら、響くはず。

面白かった。

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