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アップグレード

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上映日:2019年10月11日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:95分
ジャンル:アクションSFホラー

監督:リー・ワネル 主演:ローガン・マーシャル=グリーン
鑑賞日:2020/10/11
鑑賞媒体:Amazon Prime Video

 

【今作の★の数:★★★★】良作。観て損なし。

★の数について
★★★★★ 最高。おすすめ。
★★★★  良作。観て損なし。
★★★   普通。
★★    残念。
★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

リー・ワネルの作品が好きな人(最新作は『透明人間』!)
・少し古めかしいSF映画ファンの人

・『ヴェノム』とか漫画の『寄生獣』が好きな人


<オススメできない人>
・暗く後味の悪いストーリーが苦手な人

SF映画が好きな人(低予算映画です)

 

<あらすじ>
近未来のアメリカ。

ドローンが警察の目となり、車は自動運転が当たり前、AIが生活のサポートをしている世界で、グレイ・トレイスは、古い車をいじり販売する仕事に就き、妻のアシャと仲睦まじい日々を送っていた。しかしある日、暴漢に襲われ、最愛のアシャを殺され、自身も四肢麻痺の重症を負ってしまう。失意の中、グレイは客であった巨大企業のCEOから、実験段階にある「ステム(STEM)」と呼ばれる最新のAIチップを身体に埋め込む手術を受けないかと提案をされる。かつてのような動ける身体になるという言葉を信じて、手術を受けたグレイは、無事に四肢麻痺から解放され、それどころか人間離れした身体能力を手に入れてしまう。戸惑うグレイに、身体に埋め込まれたAI「ステム」が、人格を持ち話しかけてくる。共に妻を殺害した暴漢たちに探そうと……。


<感想>

 さすが、リー・ワネル!!

面白かった。

リー・ワネル……映画学校時代にジェームズ・ワンに出会い、『SAW』『インシディアス』シリーズの脚本を務め、最近では監督した古典ホラー『透明人間』が高評価を受けている。

近未来SFアクションをたった300万ドルの低予算で製作したことも凄いが、飽きさせないストーリー展開とラストの落とし方含めて、いい意味での嫌らしさが出ていて、改めていい脚本を書くなあと感じた。

特にステムとの相棒関係、やりとりは、往年のテレビドラマ『ナイトライダー』や漫画『寄生獣』、最近では『ヴェノム』を彷彿とさせていて、とても面白かった。

本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

<良かった点>
①ストーリー

リー・ワネルだけあって、ストーリーは全体的に暗く、そして、当然のごとく一捻りしてある。

本作『アップグレード』。大方の人は、この作品のジャンルを、SFだったり、アクションだったりに分類すると思う。でも、自分はこの作品の最終着地点は、ホラーだと思った。

確かに、人格を持ったAI「ステム」の助けを借りながら犯人を追うバディ要素や、「ステム」を埋め込んだことで発揮される人間離れしたアクション要素だけを見ると、本作は、SF作品やアクション作品にカテゴリーされるものだろう。

(また、そのアクションシーンやバディシーンがとても良かった。特にいかにも機械的な『ステム』と主人公の噛み合わないやり取りは、往年の『ナイトライダー』だったり、漫画の『寄生獣』、最近だと『ヴェノム』を彷彿としていて面白かった)

ただ、そこで終わらないのがリー・ワネル。最後に、しっかりとオチをつけて、そのオチの後味の悪さによって、ホラー展開に着地する構成にしている。

ネタバレになるのでくわしくは書かないが、あの終わり方の嫌らしさは、確かに『SAW』や『インシディアス』の匂いを感じた。人によっては、展開の強引さや矛盾点が気になる人もいるだろうが、自分はリー・ワネルらしさが堪能できたので、良かったと思う。

最新作『透明人間』もホラー要素とSF要素を組み合わせた作りになっているらしいので、そちらもいずれは鑑賞したいと思う。

 

 

 

②低予算ながらSF映画を作った点

低予算で、お金のかかりそうなSF映画を作り、低予算ながらアイディアで巧く見せている点は凄い。どうもリー・ワネルはお金をかけて派手に見せるというよりは、効果や演出といった見せ方で世界観を構築させるのが上手い監督のようだ。

本作にしても、近未来が舞台であるにも関わらず、大掛かりな生活圏や人々の暮らしなどを極力描写せず、部屋の中のAI端末だったり、手術の際に浮かび上がる人体組織図だったり、警察の目になって飛び回るドローンだったり、身体に埋め込まれた武器だったりと、小道具を精密に細かく描写することで、近未来感を出している。また、現代の街並みを登場させる際も、時代に残された貧しい人たちの住む地域として描写し、近未来感やディストピア感を出している。

お金を使わなくても、大掛かりな舞台の映画が撮れるという好事例だと思う。

 

 

 

<残念だった点>

①SF要素が古臭い

<良かった点>の②で述べていて、ここで残念だった点として挙げるのは心苦しいが、やはり低予算の限界はある。はっきりいってしまえば、全体的に安っぽい作りになっている。

CEOの豪邸が、海辺の大きな岩の下にある自然を取り入れた作りとか、自動運転で走る車とか、人体に武器を内蔵した人間とか、はっきりいってしまえば、昔から嫌というほど描写されたSF設定であり、要素であって、目新しさがまるでない。作品の雰囲気に合わせたのかもしれないが、室内のセットも全体的に暗く、近未来的な洗練された華やかさを感じなかった。

作品のもう一人の主人公である人格を持ったAI「ステム」も声だけを入れて演出している。悪くいえば、一目で低予算映画とわかる作りになってしまっていたので、SF映画を期待して観るととがっかりすると思う。

 

 

まとめると、いかにもリー・ワネルらしい嫌らしさが出たSFアクションホラー作品。オチへの強引さだったり、低予算映画ならではの安っぽさは出てしまっているが、最後まで飽きさせない構成はお見事。リー・ワネルの作品が好きなら満足のできる出来になっていると思う。

 

 

補足:作中で、個人的に印象に残った主人公と「ステム」のやりとり。

「酒を飲むと反応が鈍くなる。なぜ人間が不具合を求めるか理解できない」

「機械とは違う。人間の頭の中には、数字じゃなくて、忘れたい記憶が詰まってる」

 

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ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。
興味あれば覗いて見てください。
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