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オリエント急行殺人事件

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上映日:2017年12月08日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:114分
ジャンル:ミステリー

監督:ケネス・ブラナー 主演:ケネス・ブラナー
鑑賞日:2020/10/4
鑑賞媒体:テレビ地上波

 

【今作の★の数:★★★】 普通。

★の数について
★★★★★ 最高。おすすめ。
★★★★  良作。観て損なし。
★★★   普通。
★★    残念。
★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

・ミステリ映画好き
・ミステリ映画は好きだけど古典は知らない人

アガサ・クリスティのファン

・過去作の『オリエント急行殺人事件』やイギリスドラマ版でポアロを演じたデヴィッド・スーシェとは別物と割り切って観れる人


<オススメできない人>
・過去作の『オリエント急行殺人事件』やイギリスドラマ版が好きな人

・原作・話の結末を知っている人

・大仰な物語が苦手な人

 

<あらすじ>
エルサレムでの事件を解決した名探偵のエルキュール・ポアロは、イギリスで起きた事件の解決を依頼され、急遽、イスタンブールからロンドンをつなぐ鉄道・オリエント急行に乗車する。
オリエント急行内でくつろぐポアロに、商売のトラブルから脅迫を受けているというアメリカ人富豪・ラチェットに身辺の警護を頼まれる。気乗りのしないポアロはラチェットの要請を断ったのだが、その夜オリエント急行は雪崩のために脱線事故を起こし、山腹の高架橋で立ち往生してしまう。

その時、車内ではラチェットがナイフで身体の12か所を刺され殺害されていた。

陸の密室となったオリエント急行内で、ポアロは犯人捜しを始める。


<感想>

 

面白かったよ、普通に。

それは、ハードルが上がるのは仕方ないさ。

だって、あのエルキュール・ポアロのリメイクだもの。原作ファンは多いし、特に名作とされた過去作にも、ポアロのアイコンを定着させたデヴィッド・スーシェ主演のイギリステレビドラマ版にだってファンは多い。

しかも『オリエント急行殺人事件』なんて、『そして、誰もいなくなった』同様にアガサ・クリスティー作品を読んだことない人でも犯人や結末を知っている超がつくほどの有名作品だし。

だから、相当に比較もされるし、批判がされるのは監督のケネス・ブラナーも覚悟はしたはず。

それでも、現代にポアロが甦ったことは大きいと思う。古典を知らない若い人たちへの興味を引く手助けがされると思うから。

日本でも、また金田一耕助明智小五郎を映画化してくれないかなあ。テレビドラマ版もいいけどさ。

本作品の感想を書くにあたって、改めて”ミステリの女王”アガサ・クリスティーについて調べてみたら、すごいね、本当に。スケールが違う。

作品は英語圏を越えて、全世界で10億部以上出版されていて、聖書とシェイクスピアの次によく読まれているという説もあり、ユネスコの文化統計年鑑では「最高頻度で翻訳された著者」のトップに位置。ギネスブックは「史上最高のベストセラー作家」として認定している。

特に、ミステリの普遍的なトリックである”叙述トリック(書き方で読書を欺く手法)”は、アガサ・クリスティの登場とともに広まったとされているし。

本作の原作となった『オリエント急行殺人事件』も、ミステリの掟破りともいわれた犯人像は、あまりにも有名。また、作品自体が、アガサ・クリスティが離婚後にオリエント急行イスタンブールバグダードへ一人旅した影響が出ているというのも面白い。

 

さて、前置きはここまでにして、本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

<良かった点>


①古きミステリの香りと最新の技術を用いた世界観の構築

 

「お金がかかっているなあ」というのが作品の第一印象であり、この作品をリメイクをする意味だと感じた。時代を反映させたセットに列車の内装・登場人物たちの衣装と、古き時代を感じさせるのに、CGなどを使い現代風に観やすくしている。

リメイクなんだから、当然といわれればそれまでだが、ここは大きなポイントだと思う。古典映画に名作が多くても、敬遠してしまう要因の一つが、映像の粗さや古さだったりの観にくさだと思うから。少なくとも古典作品を知らない人に対しては良いアプローチだと思う。

話自体は古いものなので、殺人事件に関して、やたらと個人の罪の意識だったり、人種間の偏見などの部分をクローズアップしている。猟奇殺人やらサイコパスやらの刺激にあふれている今のミステリ映画であれば、決して大きなものではないが、謎解きや人間性を強く強調した古きミステリの香りを感じられて、逆に新鮮だった。

 

ポアロのキャラクター

エルキュール・ポアロといえば、知っている人は、真っ先に前述したイギリスのテレビシリーズでデヴィッド・スーシェが演じた、あの姿を思い浮かべるだろう。小男で特徴的な口ひげ、卵型の頭。

だが、本作ではイギリスの名優・ケネス・ブラナーが新たなポアロ像に挑戦している。スマートで渋みがあり、口ひげこそ変だがイケメンで、何なら原作にないアクションまでこなす。

ポアロに固まったイメージがなければ、これはこれでアリと個人的には思った。

ちんちくりんな変人が主人公よりも、変人なイケメンが主人公の方が画面映えがすることは福山雅治さんの『ガリレオ』で学んだ。

外見はスマートだが、中身は原作通りの変人で、数か国語を操り、好きなことはとことん楽しむが嫌なことは一切しない(チャールズ・ディケンズ読んで、変な声でゲラゲラ笑う、モンブランの上っ面だけを食べるなど)初対面のラチェットの依頼を「顔が気に入らない」と断ったシーンは面白かった。

※でも、ポアロの気持ちはわかる。殺されるアメリカ人富豪ラチェットをジョニー・デップが演じているが、悪人顔だと思う。あんな悪い顔した人間が善人なわけがない。

デヴィッド・スーシェほどの滑稽さは出ていないが、やはり変なキャラクターであり、殺人事件の奇抜さとよく合っていると思う。

話の終わりに『ナイル殺人事件』が示唆されているので、まだ活躍を観れると思うと心躍る自分がいるのも事実。

ちなみに作中で、初対面の人たちが、ポアロをやたらと「ヘラクレスポアロ」と呼んでいたのは、名前のエルキュールが、フランス語ではヘラクレスになるためらしい。

アンリとヘンリーみたいなもんだね、納得。

 

<残念だった点>

①追加された場面が作品の色に合わない

原作から見やすくするためか、本リメイク作は、何点か追加・変更された箇所がある。そのどれもが、現代風に入れているためか、作風に合わずに、違和感として漂ってしまった。よい試みなのかもしれないが、原作が好きなら、興醒めするだろう。

例えば、冒頭のエルサレムでの事件。警察が「犯人の目星がつかない難事件」といっていたが、本当に? 動機も犯人も単純で、わざわざ名探偵ポアロの見せ場を作るような事件ではない気がしたが……。

例えば、ポアロエルサレムで語った自身の推理に関して「この世界をあるべき姿で捉えてしまい、あるべき姿でないときに不完全さを感じる」。普通に明晰な頭脳(灰色の脳細胞)でよいのでは? そんな厨二的な設定しなくても。

例えば、列車内での逃走アクションに、突然始まる銃撃。ガイ・リッチー監督の『シャーロック・ホームズ』じゃあるまいし、そんなアクション必要だった?

 

②登場人物、話し方や感情表現が大仰で引っかかる

時代ものなので、仕方ないが、いちいちいい方や表現が大げさ。また、登場人物も(ポアロからしてそうだが)不遜な人物像の人間が多くて、現代の映画を見慣れているとあまり愉快な気持ちになれなかった。この辺のキャラクター造詣を見直すことはあってもよかったのではないか。

もっといい方ってあるよね。

 

まとめると、超有名なミステリ古典のリメイク作品なので、一定の安定感はある。ただし、原作からの変なシーン追加があったり、ポワロがイメージと違ったりと、過去作が好きだったり、イギリステレビドラマ版が好きな人が批判をしたい気持ちもわかる。

それでも、現代に甦った名探偵エルキュール・ポワロの活躍。

世界で半世紀以上も愛される理由というのが、きっとわかるはず。

話は聞いたことがあっても、まだ鑑賞したことのない人は観れば楽しめると思うので、今月公開される『ナイル殺人事件』と併せて是非。

 

補足:個人的に、作中で一番刺さったポアロのセリフ。

「殺人は認めない。世のためにならない悪人であっても殺してはいけない。人は獣よりマシな存在でないと」と、自身のポリシーを語るシーンは、ポアロの結末を知っている自分はすごく納得させられた。

 

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