映画初心者のドラ猫ロボット

映画初心者が玄人になるために感想を上げていくブログ

ザ・ベビーシッター ~キラークイーン~

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配信開始日:2020/9/10 製作国:アメリカ / 上映時間:101分
ジャンル:ホラーコメディ
監督:マックG 主演:ジュダ・ルイス
鑑賞日:2020/9/20
鑑賞媒体:NETFLIX

【今作の★の数:★★★★】 良作。観て損なし。

★の数について
★★★★★ 最高。おすすめ。
★★★★  良作。観て損なし。
★★★   普通。
★★    残念。
★    うーん。

<この映画は、こんな人にオススメ!>
NETFLIXに加入している人

・前作『ザ・ベビーシッター』が面白かった人
・『ハッピー・デス・デイ』みたいなホラーコメディ映画が好きな人
・ノリの軽いアメリカ映画が好きな人
・エロ・グロ表現に嫌悪感のない人
ジュブナイル系の作品が好きな人

<オススメできない人>
・血がドバーとか、頭がボーンとかの人体欠損描写が苦手な人(コメディタッチで描いてるがなかなかグロい)
NETFLIXに加入していない人(配信限定作品)

・前作『ザ・ベビーシッター』のノリが好きで、期待値高めで観る人

 

<あらすじ>
前作の悪夢から2年。

コール・ジョンソンは未だに当時の記憶に苦しめられていた。カルト集団を血みどろの闘いの末に倒したはずだったが、その痕跡が何もかも消えていたために、誰一人としてコールの言葉や彼の身に起こった出来事を信じなかったからだ。両親でさえも信じない状況のなか、カウンセリングを受けつつ高校生活を送っていた。当時の記憶に苦しむ彼を周囲は変わり者とみなして、高校生活もイジメられる日々が続く。そんなコールを見かねて幼馴染のメラニーは彼を湖でのパーティーに誘う。気乗りのしないコールだったが、そんな彼に、またしても悪夢が訪れる。


<感想>
ザ・ベビーシッター』が帰ってきたぞーーーー!
やはり、これがNETFLEXの力なのか?
個人的には、独占配信にするにはもったいないくらいの良品だった前作。
今すぐNETFLEXへの加入を勧めくらいのホラーコメディだったが、前作から監督や主人公・周囲のキャストが変わらず製作された完全続編の今作。

良作の続編となると、その期待値の高さからがっかりさせられることが多いが、果たして、今作は……。


本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

<良かった点>
①前作を継承するシナリオ構成

まるで、『ハッピー・デス・デイ2U』を思い出させるような、シナリオ構成の妙。

『ハッピー・デス・デイ2U』は、前作のストーリー展開を伏線に使って、観客を驚かすという構成になっていたが、今作『ザ・ベビーシッター ~キラークイーン~』にも同様な仕掛けがされている。

なので、前作が好きで今作を鑑賞した自分には、中盤に「えぇ!!」と驚く展開が配置されていて、そこからのお祭り騒ぎのストーリーは、主人公・コール君の「対カルト◎」の特殊能力が遺憾なく発揮され、とても楽しかった。まんまと製作陣の仕掛けた罠に嵌り、にんまり。

(若干パンチは弱くなったが)、アメリカ映画独特のノリの軽さは健在で、深刻な事態を笑いで流してしまう空気感とセンスは〇。コメディホラー映画が好きな人には、とても観やすい作品だと思う。

②抜群の配役のキャスト陣

前作も、主人公・コール君をはじめ、姉御肌のベビーシッター・ビー、脱ぎたがり・マックス、アナウンサー志望の頭カラッポのチアガール・アリソンなど個性強めなキャラクターと、それにばっちりと嵌った俳優陣のキャスティングが抜群だったが、

前作から2年。

”容赦のないマコーレ・カルキン”だったコール君は、若手ハリウッドスター感満載のイケメンに成長。(変わり者とはいえ、彼ほどのイケメンがスクールカースト下位とは無理があるのでは?)

可憐な幼馴染メラニーも健在。※エミリー・アリン・リンド という女優が演じているのだが、彼女はスティーブン・キング原作映画化の『ドクタースリープ』という作品で”スネークバイト・アンディ”という幼さと綺麗さが同居する異能者を演じていて、存在感を発揮していた。

今作も、その可憐な外見と、後半の演技、とても良かった。

そして、新たに登場する映画好きの変人美少女・フィービー。彼女の存在が、今作の肝であり、その可愛らしさと突飛な行動が作品を彩っていた。

相も変わらず個性強めなキャラクターだらけで、それだけでも本作を楽むことが出来る。キャスティングされた俳優陣も、皆イメージに合っていて良かった。


<残念だった点>

①パワーダウンしたコメディ要素

あらすじを見てもらうと分かるが、今作は、前作の終わりから始まる。獅子奮迅の活躍でカルト集団をせん滅したコール君だったが、警察や消防が来ると、なぜか死体も事件の痕跡も綺麗さっぱりと消えていた。そのため、カルトに襲われた恐怖と、事件を誰にも信じてもらえない孤独感で苦悩するコール君の日々が前半で描かれている。

前作だったら、この展開すらもおふざけで流しそうなものだが、今作は至って真面目に学生生活を思うように送れないコール君にスポットが当たっていた。あの過剰ともいえるふざけた演出満載だった前作は何だったのか? と思えるくらいのまともさである。

そのため、作品の最大の特徴だったコミカルさだったり、軽さが薄れてしまった気がする。個人的には面白さが減退した。

 

②続編でありながら、前作ありきの構成

良かった点でも書いたが、本作品は前作の『ザ・ベビーシッター』を観ていないと、その面白さが半減してしまう。なにせキャラクターも一緒、展開も前作を踏襲したものになっているので、一つの作品としてみるよりは、前作が前編、今作が後編、という感じで鑑賞しないと厳しい(本作を観る人の大半がそうだろうが)。なので、単品としては、どうしても評価がしにくい、というかできない。逆をいえば、今作を鑑賞するためには前作を観ないといけない。コンパクトな出来とはいえ、今作を観るために、80分以上ある前作を鑑賞しないといけないのは、やはり減点対象だとは思う。

あと、あまりにも前作に引っ張られ過ぎたのか、今作で新登場する人物が何人かいるのだが、ヒロイン格のフィービー以外が空気であったのも残念。


NETFLIX配信限定作品という点
間違いなく良作ではあると思うが、観るためには、NETFLIXに加入しないといけない。

個人的には、NETFLIXは加入しても決して損のない動画配信サービスだとは思うが、人によってはハードルは高いだろう。


映画・ドラマ・アニメと良作がたくさん配信されていて、定額で見れます。

興味のある人は、是非、 NETFLIXに加入しましょう!


まとめると、前作から若干パワーダウンした感はいなめないが、よくできたホラーコメディ映画。
相も変わらず、グロいけど、個性強めな登場人物と、軽いノリで展開するアメリカ映画特有の作品。

『ハッピー・デス・デイ』が好きな人は、前作と併せて観てほしい作品。

映画レビューサイト フィルマークスに感想を投稿しています。
ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。
興味あれば覗いて見てください。
https://filmarks.com/

<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>


1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密
2:メランコリック
2:レディ・オア・ノット
2:エクストリーム・ジョブ
2:ザ・ベビーシッター
6:ハッピー・デス・デイ
6:ドクタースリープ
8:9人の翻訳家 囚われたベストセラー
9:パラサイト 半地下の家族
9:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド
9:レイヤー・ケーキ
12:ミッドサマー
13:仮面病棟
14:エスケープ・ルーム
15:プライス 戦慄の報酬
16:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

16:ザ・ベビーシッターキラークイーン
18:タイムリミット 見知らぬ影
19:ペットセメタリー2019
20:シライサン
21:コンジアム
22:見えない目撃者
23:スケアリーストーリーズ 怖い本
24:輪廻
25:バニシング
26:犬鳴村
27:マンディ 地獄のロード・ウォリアー

ザ・ベビーシッター(若干ネタバレあり)

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配信開始日:2017/10/13 製作国:アメリカ / 上映時間:85分  ジャンル:コメディホラー

監督:マックG 主演:サマラ・ウィーヴィング/ジュダ・ルイス

鑑賞日:2020/9/20

鑑賞媒体:NETFLIX


【今作の★の数:★★★★★】 最高。おすすめ。

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

NETFLIXに加入している人

・『ハッピー・デス・デイ』みたいなホラーコメディ映画が好きな人

・ノリの軽いアメリカ映画が好きな人

・エロ・グロ表現に嫌悪感のない人

・隙間時間にサクッと面白い映画が見たい人

タランティーノ作品が好きな人

ジュブナイル系の作品が好きな人

 

<オススメできない人>

・血がドバーとか、頭がボーンとかの人体欠損描写が苦手な人(コメディタッチで描いてるがなかなかグロい)

NETFLIXに加入していない人(配信限定作品)


<あらすじ>

12歳の少年、コール・ジョンソンは、少し変わった少年。自分が変わっていることを認識していて、それがコンプレックスになっている。両親は12歳の彼に、ビーという高校生の美人なベビーシッターをつけていて、彼女と過ごす日々がコールは楽しかった。ある夜、コールの両親は夫婦水入らずの一夜を過ごすために出かけ、ビーはいつものようにコールの面倒を見ていてた。普段は、すぐに寝てしまうコールだったが、その日は、自分が寝た後にビーが何をしているのかが気になりこっそりと彼女の様子を窺うことにした。そこで彼が目にしたものは……同じ高校の友人たち5人を招き入れていたビーの姿だった。簡単なゲームに興じていた彼女たちだったが、突然ビーが仲間の一人の頭にナイフを突き立てたことで事態が急転する。思いも寄らない光景を目にすることになったコールの恐怖の一夜が始まってしまう。

 

<感想>

すっごっっっっっっっく面白かった!

なんだ、これ? これがNETFLEXの力なのか?

独占配信にするにはもったいないくらいの作品。

個人的には、観れない人に、今すぐNETFLEXへの加入を勧めくらいのホラーコメディ映画の良作だった。

それにしても、サマラ・ウィーヴィングとジュダ・ルイスか。

『レディ・オア・ノット』や『サマー84』など、日本未公開の良作に出ていた俳優陣が、今度はNETFLEX独占配信の作品に出演しているという事実に、にやりとした。

特にサマラ・ウィーヴィング、良かったなあ。『レディ・オア・ノット』も感じたけど、完璧なブロンド美人なのに、やさぐれた演技が板についていて素敵。

 

本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

<良かった点>

①ホラーコメディ映画の良作

アメリカ映画独特のノリの軽さ。

この個性が本作は一段と光っている。とてつもない深刻な事態が発生しているのに、笑いで流してしまう能天気ともいうべきに軽いノリと空気感。日本映画でも韓国映画でもこの軽さは出せないようなあ。

作品としては、設定と演出の巧さが光る。

作品自体は、コール君がビーたちの目的を知った事で命を狙われることになるという、「信じていた者に裏切られ、襲われる恐怖」を題材とした、ともすればありふれた話なのだが、後述する登場人物たちの特異さと、タランティーノ調のおふざけの入った演出の数々が、話のもの悲しさをぶっ飛ばす。家の中で抵抗するコール君に次々と撃退されるビー一味のピタゴラスイッチ的な死に様が『ファイナルディスティネーション』を連想させて、各人の死に方はかなりグロいのに、観ているものを本気で笑わせるという、良質のコメディに変質させている。

隙あらば笑わせにくるセリフ回しもいい。

大量の血を浴びた敵の一人が叫ぶシーン。

「なんてことだ! 4人に3人は性病を持っているんだぞ。俺は二度も血を浴びた! オレは、エイズに感染した!」いや、コンプライアンス的にやばいだろ、コレ。

特に終盤で唐突にかかるQueenの『We Are the Champions』、そして、あの「想定外」のシーン。いやー、凄いね。おバカ映画だわ、こりゃあ。シリアスな内容なのに、中身おバカ映画って、『ハッピー・デス・デイ』を思い出させるなあ。

構成も巧い。85分という限られた時間の中で、冒頭から一切無駄な場面がなく、映し出された一見意味のないシーンが、必ず後に使われるという伏線回収がされていて、非常に見やすい映画になっている。

 

 

 

②主人公コール君をはじめとした各キャラクターの個性が強すぎる点

この映画は「残酷な『ホームアローン』テイスト」が盛り込まれていて、惨状となった自身の家で、殺人者たちを駆逐していくという主人公コール君のヒーロームービーとしての側面がとても強い。そして、肝心のコール君はというと、個性が立ちまくっている。

誰もが認めるイケメンで、注射恐怖症で、SF映画オタクで、頭は切れるが身体は鈍い。学校ではいじめらているもやしっ子なのに、殺人鬼に襲われたら逃げるのではなく迎撃して返り討ちにしたかと思いきや、今どきの子供にしては恐ろしく純粋で、「乱交」の意味を知らずにネットで調べたかと思いきや、警察無線で使用させる暗号を当然のように知っていたりと。なんだこの子、キャプテンアメリカかよ。

彼のいい意味でのおとぼけ具合が、この作品を良作に仕立て上げている要因でもあると思う。所々で挿入される幼馴染メラニー(超カワイイ!)とのイチャイチャ具合も見ていて微笑ましい。

脇を固めるキャラクターもやばい。

特に敵の強キャラ・脱ぎたがりのマックスが面白すぎる。人を殺すことが望みのサイコキラーなのに、殺す対象のコール君が窓から落ちたら、「大丈夫か? 深呼吸しろ」と心配したり、コール君がいじめられていることを知ると、絞殺しようとした途中でも「許せない侮辱だ、あいつをブチのめせ」と解放したり、いじめっ子にやられたコール君を「立ち向かったのは偉い」と慰めたり……本当に、なんなんだ、こいつは。

物語のヒロイン?たる、ビーもいい。完璧なブロンド美人・サマラ・ウィーヴィングが作品の前半部分では、ノリの良い気さくなお姉さんを演じていて、その豪快さと圧倒的な美貌でコール君に寄り添うベビーシッターを好演している。コール君と家の中で踊るダンスシーンは、ほっこりとする。コール君が憧れる理由はよくわかる。

 

<残念だった点>

NETFLIX配信限定作品という点

これだよ。

もっと多くの人に観てもらいたい良作。※血がドバドバ出るから、苦手な人は注意だが。

 

今なら、続編の『ザ・ベビーシッター キラークィーン』も配信されていますので、興味のある人は、是非、 NETFLIXに加入しましょう!

 

 

まとめると、ホラーコメディ映画の良作。

グロいのに、とぼけた登場人物とおふざけの演出で、85分間終始軽いノリで展開する、これぞアメリカ映画という作品。

 

これを独占配信するあたりに、NETFLEXの偉大さと底力を感じてしまう。

『ハッピー・デス・デイ』が好きな人は観てほしい一作。

 

映画レビューサイト フィルマークスに感想を投稿しています。

ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。

興味あれば覗いて見てください。

https://filmarks.com/

 

<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>

1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2:メランコリック

2:レディオアノット

2:エクストリーム・ジョブ

2:ザ・ベビーシッター

6:ハッピー・デス・デイ

6:ドクタースリープ

8:9人の翻訳家 囚われたベストセラー

9:パラサイト 半地下の家族

9:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

9:レイヤー・ケーキ

12:ミッドサマー

13:仮面病棟

14:エスケープ・ルーム

15:プライス 戦慄の報酬

16:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

17:タイムリミット 見知らぬ影

18:ペットセメタリー2019

19:シライサン

20:コンジアム

21:見えない目撃者

22:スケアリーストーリーズ 怖い本

23:輪廻

24:バニシング

25:犬鳴村

26:マンディ 地獄のロード・ウォリアー

コンジアム

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上映日:2019年03月23日 / 製作国:韓国 / 上映時間:94分
ジャンル:ホラー

監督:チョン・ボムシク 主演:ウィ・ハジュン

鑑賞日:2020/7/12

鑑賞媒体:DVDレンタル


【今作の★の数:★★★】 普通。

※『グレイブ・エンカウンターズ』を観ていない人には「★★★★良作。観て損なし」

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

・ガチガチのホラー映画が見たい人

・POV形式の作品が好きな人

・「わー」「きゃー」な絶叫系映画が苦手でない人

・解き明かされない怖さや謎に納得ができる人

 

<オススメできない人>

・『グレイヴ・エンカウンターズ』を観たことがある人

・怖がりな人、ホラー映画が苦手な人


<あらすじ>

戦時中、旧日本軍により拷問や処刑の目的で建てられ、戦後は精神病院として開院したが、大勢の患者が謎の死を遂げたり、院長も失踪するなど不可解な出来事が多発したため廃院となったコンジアム精神病院。

人気動画配信チャンネル「ホラータイムズ」を主宰するハジュンは、そんないわくつきの心霊スポットに、一般からの参加者を募り潜入し、動画撮影をすることにした。自身は屋外で動画をチェックしながら指示を出し、スタッフ6人が病院内を探索し、最終的には幽霊が目撃されたという402号室に辿り着くという目的でコンジアム精神病院への潜入ライブ配信をスタートした。

ハジュンは金儲けのために、視聴者数100万人を目指し、スタッフともども病院内に仕掛けを施して、怪奇現象を演出。視聴者数は伸びていくのだが……突如異変が起こった。ドキュメンタリー調のPOV(主観映像)形式で描くホラー映画。

 

<感想>

個人的に、この映画を観る前の最大の注意点!

『グレイヴ・エンカウンターズ』という2011年にアメリカで撮られたPOV形式の廃墟探索型のホラー映画を観ていないこと。

これにつきるかな。

この作品を観ているかいないかで、感想は変化すると思う。

自分は、以前に観たことがあったので、点数が普通になっている。

ホラー映画としては、非常によくできた秀作だとは思うが、どうしても鑑賞中に既視感が邪魔をしてしまった。

どんなに優れた恐怖作品であっても、「この先にこういう展開があるよ」「入ってきた時はこうだったけど、これからここはこういう風に変化するんだよ」と前情報があると、観る側としては驚く「準備」が出来てしまう。そして、この「準備」というものが、ホラー映画を楽しむために一番足を引っ張る要素になってしまうのである。

そう。

両方の作品のネタバレになるので、詳しくは書かないが、『グレイヴ・エンカウンターズ』と『コンジアム』は、構成がとても良く似ているのである。

 

それでも、作品の出来映えとしては、設定や恐怖表現は素晴らしく、そもそものモチーフが実在の心霊スポットである。2012年にCNNの「世界七大禁断の地」のひとつに選出された、“韓国最恐の心霊スポット”といわれる京畿道広州市に実在するコンジアム精神病院跡を舞台にしている。本作公開時、韓国では、あの『レディ・プレイヤー1』を抑えてその週の興行成績1位を獲得。韓国ホラー映画歴代2位の数字を記録している。

 

本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

<良かった点>

①「動画配信者」という設定。

巧い。

現代のホラー作品を撮る。しかもモキュメンタリー調に撮るとなると、今の世の中では大勢が観ている個人の動画配信サービス(YouTube)の存在は無視できないと思う。そこで主人公たちを動画配信者という役柄に設定し、注目を集めるために過激なことをする、危険でも高評価・視聴数を稼ぐために無茶をする、というYouTuberの特性を上手く組み込んでいる。主人公たちを後戻りのできない窮地に追い込むための設定の説得力としてすごく納得できるし、巧いと思う。

動画配信者にとっては、どんな化け物よりも怖い、あのオチも秀逸。

 

②役者陣の顔芸

そこまで有名な俳優陣が出演をしているわけではないが、(韓流に疎いので有名な人が出ていたらごめんなさい)一人一人の過剰ともいえる絶叫、恐怖の表情が作品の怖さを盛り立てるスパイスになっている。動画配信なので、一人一人に定点カメラをつけて表情が分かるように撮影をしているのも、とても効果的。

特に中盤から終盤にかけての一人の女の子に起こる、顔のある部分の変化は、この作品のハイライトといってもいいだろう。あの場面は本当に怖かったし、気持ち悪かった。

 

③ホラー映画に振り切っている点

いわくつきの心霊スポットに行って無事で済むわけがない。ホラー映画だったり、怪談ではもはや古典ともいえる定番な話だが、それに作品自体が特化している。この割り切りはとても好印象だった。

心霊スポットなんで、説明のつかない現象が起こる。

心霊スポットなんで、成仏できない霊たちが蠢いて引きずり込む。

心霊スポットなんで、一端入ったら、ただ駆逐されていくだけ。

もうね、ディス・イズ・ホラー映画。

耐性のない人は注意が必要だと思う。

暗闇・音・怪奇現象・幽霊などなど、古典アイテムを次々にぶちこんで本気で怖がらせに来ている。

 

<残念だった点>

①どこかで見たような演出、展開

前述したがこれに尽きる。

<良かった点>②で触れたある女の子の演出、これ以外は、どこかで見たような展開であり、予想できてしまう想定内の驚きが続く。

※『グレイヴ・エンカウンターズ』を観た影響かもしれないが、こういったお化け屋敷探索型のホラー作品が似通ってしまうのは、ある程度仕方ないとは思う。

脅かし方も、パニックになった出演陣の絶叫であったり、暗闇でのちょっとした変化だったりとオーソドックスな力技の繰り返し。やたらと叫ぶ映画が苦手な人は注意が必要かも。

 

まとめると、廃墟探索型ホラー映画の秀作。

POV形式で撮られているが、手ブレもなくとても観やすい作品になっている。いわくつきの心霊スポットで訳の分からないものが襲ってくる恐怖は、ホラー映画のお手本ともいうべき出来。怖いのが苦手だったり、あまり心霊系のホラー映画を見たことがないという人は注意が必要かも。

ホラー映画を見慣れた人にも、主人公たちが「動画を撮る」という目的で最新の技術を駆使して視聴者を獲得していくという設定には、目新しさを感じると思う。

それにしても……恐怖をあおるには黒のカラーコンタクトレンズか。勉強になった。

 

補足:アヨン役の女優さん オ・アヨンがカワイイ! この作品、役者陣が皆、本名で出演している。なるほど最後までYouTubeっぽい。

 

映画レビューサイト フィルマークスに感想を投稿しています。

ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。

興味あれば覗いて見てください。

https://filmarks.com/

 

<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>

1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2:メランコリック

2:レディオアノット

2:エクストリーム・ジョブ

5:ハッピー・デス・デイ

5:ドクタースリープ

7:9人の翻訳家 囚われたベストセラー

8:パラサイト 半地下の家族

8:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

8:レイヤー・ケーキ

11:ミッドサマー

12:仮面病棟

13:エスケープ・ルーム

14:プライス 戦慄の報酬

15:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

16:タイムリミット 見知らぬ影

16:ペットセメタリー2019

18:シライサン

19:コンジアム

20:見えない目撃者

21:スケアリーストーリーズ 怖い本

22:輪廻

23:バニシング

24:犬鳴村

25:マンディ 地獄のロード・ウォリアー

ドクタースリープ

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上映日:2019年11月29日 / 製作国:アメリカ / 上映時間:152分
ジャンル:ホラー

監督:マイク・フラナガン 主演:ユアン・マクレガー

鑑賞日:2020/9/18

鑑賞媒体:NETFLEX


【今作の★の数:★★★★★】 最高。おすすめ。

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

・前作『シャイニング』が好きな人

スティーブン・キング原作の映画が好きな人

レベッカ・ファーガソンが見たい人

 

<オススメできない人>

・『シャイニング』を観たことがない人

(原作・映画・テレビドラマどれかを知っていれば楽しめます)


<あらすじ>

ダニー・トランス(ユアン・マクレガー)は、40年前のオーバールックホテルの惨劇で、狂った父親に殺されかけたトラウマを抱えている。大人になった今も人を避けるかのように孤独に暮らす彼は、ニューハンプシャー州の小さな町フレイジャーに住みつき、幼少期より持つ”シャイニング(作中では超能力の意)”の能力などを使いでホスピスで働いていた。そんな彼と並行して、「帽子のローズ(レベッカ・ファーガソン)」を一員とする不老不死の怪物集団”トゥルー・ノット”は、アメリカ各地でシャイニングの能力を持つ子供たちを攫っては惨殺し、生気をすすっていた。幼い頃よりシャイニングの能力を持つアブラ・ストーンは、トゥルー・ノットの犯行を感じとり、ダニーに助けを求める。そして、ダニーは、トゥルー・ノットや自身のトラウマと対峙することになる。

 

<感想>

あの名作『シャイニング』の正式な続編。
スティーブン・キングの原作は未読。

とても面白かった。最高。

同じスティーブン・キングの原作でも『IT』の陰に隠れて、本作はあまり興行収入は芳しくなかったようが、鑑賞したファンの間では、「キューブリック版とキング版の両方を踏襲した良作」との評価がされているらしい。

キューブリック版と記載したのには理由があり、特に『シャイニング』を巡っては、キューブリック版とかオリジナル版とかの表現がされる。現代ではホラー映画の傑作と称賛されている『シャイニング』(スタンリー・キューブリック監督。1980年アメリカ映画)だが、原作者のキングが作品の解釈の違いを巡って、監督を散々に批判に、後にテレビドラマ版として撮り直すといういざこざがあった作品としても有名。

本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

 

 

 

<良かった点>

①『シャイニング』ファンへ捧げる物語の完結編。

物語の概要として、本作は前作の登場人物:ダニー・トランスの再生を描いた『シャイニング』補完の物語である。

そのため『シャイニング』ファンには堪らない前作を踏襲した数々のシーンが登場する。

 

 ・冒頭から幽霊となって登場するホテル料理人のディック・ハロラン

・『シャイニング』ではあまりに有名な「REDRUM」の綴り

・最後の対決の舞台となったあの場所に、彼の登場。

・割れたドアの穴から顔を覗かせたユアン・マクレガー。(パッケージにもなっているシーンで、これはもちろん『シャイニング』のパッケージ画像を連想させる作りになっている。自分は作中でこのシーンを見たときに、ジャック・トランスのセリフである「おこんばんは」と呟いてしまった)

などなど。

特に、物語の後半パートは、キューブリック版『シャイニング』を踏襲していて、好きな人には間違いなく嵌まれる作品だと思う。

本作とキングの『ドクタースリープ』の原作とでは、物語の結末が違うらしいのだが、あのラストシーンを含めて、ダニー・トランスの物語となっていて、キューブリック版『シャイニング』が大好きだった自分としては、とても堪能できた。脚本を書く際には、原作とキューブリック版の板挟みになっただろうことは想像に難くないが、この出来映えは素晴らしいと思う。

安らかに死へと導くもの「ドクタースリープ」。いいニックネームだと思う。

最後の「君はそのままでいい。輝き続けろ」というセリフも作品自体を象徴していてともて良かった。

 

レベッカ・ファーガソン

主人公たちと敵対する「帽子のローズ」という不老不死の怪物を演じているが、素晴らしい。

美人で、負けず嫌い。目的のためなら手段を選ばない利己的な役柄に、その美貌が見事にシンクロしていて、作中で、仲間の一人であるアンディが「今まで見た中で一番きれいな人」と表現していたが、圧倒的な華があった。

『ミッション・インポッシブル』の時とは、また違った幅の演技が出来るのも魅力。彼女観たさでBlu-ray買おうかな……。

 

スティーブン・キングの作品という安心感

映像化をするのに非常に向いている作家なんだとは思う。『スタンド・バイ・ミー』『グリーン・マイル』『ショーシャンクの空に』などの感動作品もあり多才な作家だが、基本的にはホラー作家として有名な人物。

恐怖の表現の分かりやすいさが、映像としての面白さにつながっていると思う。

「人にはトラウマってあるよね?」「そのトラウマって、これこれこういうものだよね?」と懇切丁寧に嫌なことを繰り返し説明して演出してくる辺りが、この作家の嫌らしさだと思うし、分かりやすさだと思う。

人間の内に秘めた狂気みたいな怖さではないが、分かりやすいから怖い。

※まあ、人によってはその表現が「単純すぎない?」と思う人もいると思うが。

映像化しやすいから、映画化に大きな外れがないし、大当たりを飛ばすこともある。安心して観れる原作者というアドバンテージは大きいと思う。

 

<残念だった点>

①楽しめる人を選んでしまう点

まず、第一に『シャイニング』を知らない人お断りの内容になっている。冒頭から、登場する237号室の亡霊やダニー・トランスの過去、そしてラストの展開など、物語自体が、前作をなぞって結末を描いているので、知識のない人は、理解が出来ないと思う。

第二に、キューブリック版の特徴でもあった「閉鎖された建物の中で狂人に追いつめられていく恐怖」という内容を想像して、本作を観ると……、中身は不老不死の化け物たちとのバトル物である。「はあ? なにこれ?」となってしまうかもしれない。さらに、この異能の化け物たちとのバトル物に一定の緊張感だったり絶望感があれば、鑑賞ポイントとして『シャイニング』を知らない人でも楽しめたかもしれないが、怪物集団トゥルー・ノットの面々が、銃で撃たれたらあっさり死ぬ、事故に遭っても死ぬという、ちょっと不思議な力が使える長生きさんなので、闘いがあっさりと終わってしまう。バトル要素が副菜でしかないのも一見さんには厳しい所。

 

②長い

作品自体が152分とかなり長い。

前半パートも、トゥルー・ノット一行と新たなシャイニングであるアブラの紹介、そして、ダニー・トランスが人間らしい生活を取り戻していくくだりが長い。『シャイニング』からの流れと後半パートへ向けて仕方のない準備なのだが、脚本も、彼女たちの紹介エピソードに終始していて、これといったパンチ力がないので、前作を知らない人に、この時間を見せるのは酷だと思うし、知らない人が「よっしゃ、観るか!」とはならないと思う。

興行収入面で『IT』と差が出てしまったのは、この初見さんお断りな内容であるためだろう。

 

まとめると、『シャイニング』ファンは観て損のない作品。未鑑賞で興味のある方は、必ず前作を観てからの鑑賞をオススメします(キューブリック版だけでもok。ジャック・ニコルソンの鬼気迫る演技はトラウマもの。今観ても恐怖を存分に味わえる名作)。

個人的には、大変満足できる一本だった。

今年鑑賞した中ではベスト級。オススメな一本。

 

映画レビューサイト フィルマークスに感想を投稿しています。

ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。

興味あれば覗いて見てください。

https://filmarks.com/

 

<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>

1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2:メランコリック

2:レディオアノット

2:エクストリーム・ジョブ

5:ハッピー・デス・デイ

5:ドクタースリープ

7:9人の翻訳家 囚われたベストセラー

8:パラサイト 半地下の家族

8:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

8:レイヤー・ケーキ

11:ミッドサマー

12:仮面病棟

13:エスケープ・ルーム

14:プライス 戦慄の報酬

15:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

16:タイムリミット 見知らぬ影

16:ペットセメタリー2019

18:シライサン

19:見えない目撃者

20:スケアリーストーリーズ 怖い本

21:輪廻

22:バニシング

23:犬鳴村

24:マンディ 地獄のロード・ウォリアー

マンディ 地獄のロード・ウォリアー

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上映日:2018年11月10日 / 製作国:アメリカベルギー / 上映時間:121分
ジャンル:アクションホラースリラー

監督:パノス・コスマトス 主演:ニコラス・ケイジ

鑑賞日:2020/9/13

鑑賞媒体:DVDレンタル


【今作の★の数:なし】 映画見慣れていない人は見ないでください

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

・超B級映画が好きな人

・カルト映画が大好物な人

・心が広い人

・友達とツッコミながら映画を観たい人

 

<オススメできない人>

・普通に映画を楽しみたい人


<あらすじ>

過去のある男レッド(ニコラス・ケイジ)は、愛する女性マンディと人里離れた山の中で静かに暮していた。しかし、ある日やってきたカルト集団の指導者によって、マンディは捕らえられ、レッドの目の前で惨殺されてしまう。怒り狂ったレッドは、復讐を行う。

 

<感想>

今の時代にとんでもない映画をつくったなあ。

良く言えばクソ映画。

悪く言えばクソ映画。

自分、ドラ猫ロボットは映画初心者であり、カルト映画やクソ映画に耐性があまりない。とてもじゃないが、本作品はまとまなテンションでは観れないと思った。

しかし、このベルギー映画アメリカの映画批評サイト Rotten Tomatoesで大絶賛されている。批評家支持率は91%! 平均点は10点満点中7.6点!! しかも、第51回シッチェス・カタルニア国際映画祭という浅学な自分は知らない映画祭では、パノス・コスマトス監督が監督賞を受賞、ニコラス・ケイジが名誉賞をW受賞。※しかも本作の製作陣には、イライジャ・ウッドが名を連ねている。

やはり映画文化は奥が深い。

本作品を通じて、自分のような映画初心者にはまだまだ計れない世界があると感じた。

本作品の感想を「良かった点」と「残念だった点」に分けて、書いてみたいと思う。

 

 

<良かった点>

①すべてのB級映画好きに捧げる一般の方お断りな内容の数々

洗脳でもするつもりか?と疑いたくなる常に流れるエッジの利いたロックなBGM。

「部屋を明るくしてテレビから離れてご覧ください」と注釈がつきそうな、暗い画面にチラつく原色の映像エフェクト。

時折挿入される意味不明なアニメーション。

まともな人物が一人もおらず、なぜ彼らはイカれているのかという説明もない、投げっぱなしジャーマンな人物設定の数々。(あの虎を飼ってたおっさんは一体?)

妻を殺されて悲観し、酒を煽って絶叫するブリーフ姿のニコラス・ケイジのシーンが、それまでの暗い画面と違い、鮮明で見やすい映像に切り替わる謎演出。

ラストカットで明かされる、80年代のSFか?と思うような世界観。

などなど、作品を構成するほぼ全ての要素が、一般の方お断りな仕様。エンターテイメントとして仕上げる気ゼロの製作陣の気概すら感じる。

おそらく80年代のB級映画ってこんな感じだったんだろうと思う。

 

<残念だった点>

①とにもかくにも超B級映画

見づらいったら、ありゃしない。

設定から、音楽から、映像から、(おそらく)監督の趣味丸出しのごった煮映画であるため、B級映画に造詣の深い人や、年に数百本と映画を観ない人にとっては、何一つとして理解が出来ない(と思う)。

とにかく、ひじょーーーに見る人を選ぶので、間違っても、人に薦めてはいけない作品。

 

『パラサイト 半地下の家族』の感想を述べたときに、「この先何年も語り継がれるだろう怪物的作品」と形容したが、おそらくこの『マンディ 地獄のロード・ウォリアー』も別の意味で怪物的な作品なのだろう。

嵌まる人には堪らない映画なんだとは思う……。

普段映画をあまり観ないという普通の人は、観ないことをオススメします。

 

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ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。

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<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>

1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2:メランコリック

2:レディオアノット

2:エクストリーム・ジョブ

5:ハッピー・デス・デイ

6:9人の翻訳家 囚われたベストセラー

7:パラサイト 半地下の家族

7:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

7:レイヤー・ケーキ

10:ミッドサマー

11:仮面病棟

12:エスケープ・ルーム

13:プライス 戦慄の報酬

14:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

15:タイムリミット 見知らぬ影

15:ペットセメタリー2019

17:シライサン

18:見えない目撃者

19:スケアリーストーリーズ 怖い本

20:輪廻

21:バニシング

22:犬鳴村

23:マンディ 地獄のロード・ウォリアー

輪廻

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製作国:日本(2005年)/ 上映時間:96分 ジャンル:ホラー

監督:清水崇 主演:優香

鑑賞日:2020/9/12

鑑賞媒体:DVDレンタル


【今作の★の数:★★★】 普通。

 

★の数について

★★★★★ 最高。おすすめ。

★★★★  良作。観て損なし。

★★★   普通。

★★    残念。

★    うーん。

 

<この映画は、こんな人にオススメ!>

清水崇監督が好きな人

・Jホラー映画が苦手でも見たい人

・優香さんのファンの人

 

<オススメできない人>

・Jホラーのじめっとした怖さが好きな人

・人形が怖い人


<あらすじ>

1970年(昭和45年)、群馬県の尾野観光ホテルで無差別大量殺人事件が発生した。犯人は大学の法医学教授・大森。被害者は大森の幼い娘と息子を含む11人。犯人の大森は犯行直後に自殺したため、動機はまったく不明であった。

35年後。映画監督の松村は、この事件を題材にした映画を撮ろうと、遺族から当時の資料や殺害された少女の形見である人形を借りて、脚本を執筆。出演者を決めるオーディションを開く。新人女優の渚は、映画の主演である少女の役に抜擢されるが、オーディションの日から、人形を抱えた見知らぬ少女の幻覚と、行ったこともないホテルの夢を見るようになる。時を同じくして、大学生の弥生も、訪れたことのないホテルの夢を頻繁に見るようになっていた。現実世界で、まったく関わりのない渚と弥生が見る夢の正体とは……。

 

<感想>

 

清水監督の新作『犬鳴村』が、個人的には「……」な出来だったので、去り行く夏にJホラーの怖さを味わいたかったので、過去作の『輪廻』を鑑賞。

本作のキャッチコピーが「ようこそ、前世へ。」だったらしいが、ポスターのおどろおどろしさにそぐわないポップな煽り文句。さて、吉と出るか凶と出るか。

良かった点と残念だった点を以下に挙げてみた。

 

<良かった点>

①豪華な俳優陣に、主演の優香さんの顔芸

劇場公開が2005年。松本まりかさんや小栗旬さんなど、今からすると、豪華な俳優陣がちょっとした役で出演して脇を固めている。※特に松本まりかさん。前世の記憶のある新人女優役で出演しているが、ちゃっと不思議ちゃん入った演技と親しみのあるかわいらしさでとっても良かった。

主演が優香さん。

優香さんの映画主演作は馴染みがなかったので、どんなものかと思ってみたが、なかなかどうして、役に嵌っていた。

特に、童顔で目の大きい彼女の驚いた表情。

目を大きく見開いて震えてみたり、気絶してみたりと、その綺麗な顔芸を存分に味わえる作品になっていて、彼女のファンにしてみたら堪らないのでは。

 

②独特の構成

まさに、清水節ともいうべき、『呪怨』でも見られたような時間軸を入れ替えて描く独特の手法が本作で使われている。

例えば……夢の中で主人公・渚がホテルを訪れると、外に大学生・弥生の姿が。そこで場面が転換して別のシーンに切り替わるのだが、これはただの夢ではなく、後に本当に起こる出来事で、自身の夢の正体を探るべく弥生がホテルを訪れるシーンへとつながるようになっている。

この時間軸の入れ替えは、不可解な場面が伏線となって後に回収されるという構成の面白さにつながるが、人によっては話を分かりにくくし、難解に感じさせてしまうという諸刃の剣でもある。少なくとも『呪怨』を知っていれば、「ああ、そういうことね」と納得できるとは思うが。

ただ、本作は、この時間軸の入れ替えによって、35年前の事件関係者と現代での輪廻転生をぼかしているので、それなりに効果的な構成だったとは思う。話のオチもしっかりとしているので、観やすかった。

 

③人形の使い方

惨殺された少女の持っていた「人形」がキーアイテムとして度々登場するが、これが気持ち悪い。※『サスペリアPart2』の人形シーンから、あまり人形にいい印象を持っていない自分には、結構刺さった。

特に終盤に主人公の前に登場する人形の「足」と「顔」。気持ち悪い。人形が気持ち悪いと思うのは、人の姿を模しているからなのかなあ。

 

<残念だった点>

①怖くない

 

これにつきる。

呪怨』を想像して観てしまうと、恐怖の表現がかなり控えめ。

直接的な血がドバーとか、化け物がドーンとかではなく、過去にあった悲劇的な惨劇を恐怖として見せているので、なんというか間接的なホラー映画と感じた。「Jホラー映画は苦手なんだよなあ」という人にはオススメかもしれないが、『呪怨』みたいなストロングスタイルを想像して観ると肩透かしをくらうかもしれない。

本作の作り方としては、ホラー映画というよりは、「事件の転生者は……」というミステリ映画テイストが強かったように思う。

 

まとめると、

面白かったが、想像していたものとは違った。

これが観終わった後の正直な感想。

決して内容にケチをつけるわけではないが、ホラー映画を観ようとして鑑賞した身としては、なんか納得がいかない。

『マローボーン家の掟』に通じるものがあった作品だった。

 

 

映画レビューサイト フィルマークスに感想を投稿しています。

ユーザー名は「ドラえもんは猫型ロボット」です。

興味あれば覗いて見てください。

https://filmarks.com/

 

<今年観て面白かったランキング(ブログ掲載のみ)>

1:ナイブズ・アウト 名探偵と刃の館の秘密

2:メランコリック

2:レディオアノット

2:エクストリーム・ジョブ

5:ハッピー・デス・デイ

6:9人の翻訳家 囚われたベストセラー

7:パラサイト 半地下の家族

7:ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド

7:レイヤー・ケーキ

10:ミッドサマー

11:仮面病棟

12:エスケープ・ルーム

13:プライス 戦慄の報酬

14:ハッピー・デス・デイ・トゥ・ユー

15:タイムリミット 見知らぬ影

15:ペットセメタリー2019

17:シライサン

18:見えない目撃者

19:スケアリーストーリーズ 怖い本

20:輪廻

21:バニシング

22:犬鳴村

余談③『蓮華の花』(小説『パズラー』より) (ミステリ小説の感想) 

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普段は観た映画の感想をつらつらと述べている映画初心者のドラ猫ロボットです。

昨日、TSUTAYAに行った際に、昨年読んで面白かった本のシリーズ物が出ていたので衝動買いしてしまいました。

買った本はコレ ↓

 

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。

 

作者である青柳碧人の前作『むかしむかしあるところに、死体がありました。』は、昔話を題材にしたガチガチの本格推理小説に仕上がっていて、読んでいてテンションが爆上がりでした。

だって、浦島太郎や一寸法師が殺人事件に遭遇するんですよ……しかも、どれも不可解な状況で起きた一見すると不可能な完全犯罪。その事件を玉手箱や打ち出の小槌といった、子供でも知っているマジックアイテムの使用方法を考えて謎を解くなんて、面白くないわけがないじゃないですか。※実際、「むかしむかしあるところに死体がありました」は本屋大賞候補作品でした。面白さ折り紙付き!

今回買った『赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。』は、その童話バージョン。あのみんなが知っている赤ずきんちゃんが、旅の先々で殺人事件に遭遇し、その推理力を駆使して、謎を解いていくという、グリム兄弟が知ったら、「その手があったか!」と膝を打ちそうな設定です。

今から読むのが楽しみです。

 

……と、前置きがだいぶ長くなってしまいましたが、自分の映画感想を見てもらうとわかると思いますが、私=ドラ猫ロボット、映画ジャンルは、ホラーやミステリが大好物です。その中でもとりわけミステリ物には目がなく、映画という媒体だけでなく、本でもミステリ小説を好んで読んだりします。※読んでいる数は多くはないですが……。

 

本日のブログでは、過去に私が読んだ中で、衝撃を受けた、あるミステリ小説の感想を投稿したいと思います。

 

作品名は『蓮華の花』(『パズラー』収録作品 作者:西澤保彦 出版社:集英社)。


全編をバラバラ殺人にこだわった『解体諸因』や同じ日を何度も繰り返して遭遇した殺人事件の謎を解く名作『七回死んだ男』でも有名な西澤保彦先生の作品です。

↓ 名作『七回死んだ男』。陰湿さやおどろおどろしさが全くないコミカルミステリ。謎解きにSF要素を盛り込んでいて、内容のあまりの面白さに時間を忘れる衝撃的な読書体験を届けてくれる一作。

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

新装版 七回死んだ男 (講談社文庫)

 

本作『蓮華の花』は、『パズラー』という6本の独立した小説が収められている短編集の中の1本であり、全編で42ページ。空いた時間にさっくと読めるお手軽作品です。

「小説の感想って短編かよっ!」と思う人もいるでしょうが、なかなかどうして、この『蓮華の花』は、その密度の濃さ・構成の巧さは、長編に匹敵するほどだと個人的には思います。読んだのは学生時代で、今から随分と前の話になりますが、今でも頭と心にしっかりと残っています。

感想を述べていきたいと思います。

 

【あらすじ】

小説家・日能克久(ひなさ かつひさ)は、高校時代の同窓会で、クラスメイトの梅木万理子が、自分を好きだったことを知らされる。よくある青春の思い出話であるはずの告白。しかし、日能の記憶によれば、万理子は死んだはずだった。だが、死んだはずの万理子は、美しい女性となって日能の前に現れる…。日能は、なぜ万理子が死んだと思い込んでいたのか。そして、浮かび上がってくる一人の少女……児玉美保。克久の思い込みとはいったいなんだったのか?

 

【感想】

人間というものは非常に自分勝手で、思い出というものは常に美化される。

作品は、主人公・克久が常に過去の自分の思い込みに違和感を覚えながら話が進んでいきます。

例えば冒頭。

20年ぶりに参加した田舎での同窓会。克久の思い出にある田舎の風景は、”田んぼのあぜ道”。しかし、田んぼに思い入れがあるわけでもないのに、どうして、自分は田んぼの風景を思い浮かべるのか?

この何気ない書き出しから物語は始まり、すでに伏線が張られています。

主人公は、学生時代に憧れた「作家」という芸術性の高い職業につき、周囲からは夢を叶えたように見えますが、自分を取り巻く環境に疲れを感じています。それは、作家志望であり子供をつくらない妻との間に漂う僅かな綻びだったり、「作家」というステータスを手に入れた自分に群がる自尊心の強い母親や、綺麗になった同級生だったり。現実に疲労感を感じる克久は、自分の思い出の中の出来事と現実の出来事に齟齬があることが気になってきます。

この話の持って行き方が巧い。

閉塞感を感じる現実世界から、かつての夢を追い求めていた学生時代に思いを馳せるのは人間としてはよくあること。

そして、物語が進み、思い出の断片と僅かな情報から克久が導き出した、誰もが知らない20年前に起こった出来事の本当の真実。

炙り出された真実は、ある登場人物にとっては、本当に救いのない容赦のないものでした。

この真実が明かされた時の衝撃。

明かされた真実を前に、私は考えてしまいました。ある人物は、なぜこんな目にあってしまったのか? 友達やかつての悩める同級生のために骨を折った結果としてはあまりにも残酷で切ない結果です。そして思い返しました。在りし日に、ある人物が語っていた「蓮華の花」の本当の役目。更に物語を締めくくる最後の場面で突き付けられたあの風景。

最後、主人公・克久は嗚咽を漏らしながら涙にくれますが、こんな場面に遭遇してしまったら、誰でもそうなるわ! 本当に残酷で悲劇的で、それでいてこんなに綺麗な物語があるのだろうか? 謎が解法された時の驚きと気持ちよさがミステリの醍醐味だとは思いますが、本作品はそこに、人の運命の残酷さと儚さを盛り込んでいます。本当に40ページとは思えない充実感が味わえる作品。

 

何を書いてもネタバレになってしまうので、これ以上は書きませんが、

本作品中、主人公・克久は事あるごとに、くどくどと現実社会への愚痴や自分の周囲への不満を漏らします。一見するとその描写が無駄に思えて冗長な作品と映るのですが、それを伏線としていて、後半の真実の露見とともに、現実社会への不満も、自分の成功も、その全てが崩れていく構成が本当に見事です。当時読んでいて鳥肌が立ちました。そして、『蓮華の花』というタイトルの付け方。完璧です。

 

「人間、誰しも自分こそが”花”になりたい。でもほんとうに”花”になれるのは一部の人間だけ……ある者は”茎”になり、ある者は”根っこ”にならざるを得ない。でも、それらはすべて”花”が咲くためには、必要なもの」

 

それは人の世の真理なんでしょうが、涙なしには、このセリフは読めません。

 

今回紹介した『蓮華の花』が収められている『パズラー』は、他の短編に、男女の高校生コンビが同級生殺人事件の謎を追う『アリバイ・ジ・アンビバレンツ』など良作があるので、是非読んでほしい一冊です。

と、おススメしておきながら、本作品、Amazonでも新品が売っておらず、中古でしか購入することが出来ません。それでも、本好き、ミステリ好きな人は是非読んでみてください。

 

以上、ドラ猫ロボットの余談でした。